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column 29

株式会社ひらせいホームセンター2023.12.15

地域や社員の声を大切に育て、
より良い未来へ。

常に社員や地域からの声を経営や店舗づくりに取り入れ、幅広い世代にいつでも誰でも気軽にお買い物を楽しんでいただける場所を、50年以上に渡り提供してきた株式会社ひらせいホームセンター。地域の人々の生活の基盤となる、愛されるホームセンターを作るため、社員一丸となって取り組む経営姿勢、枠にとらわれず様々な声を柔軟に取り入れる清水社長の今後の展望や思いを伺った。

清水 泰成(しみず やすなり)1975年生まれ。新潟市西区出身。大学卒業後、アメリカに留学、東京都内の金融機関へ入社。その後、8年前に株式会社ひらせいホームセンターに入社。営業本部長、取締役副社長を経て、2022年12月に代表取締役社長に就任。従来の事業に加え、新たに「ひらせいファーム」事業を立ち上げ、農業にも力を入れている。休日の過ごし方は、週1回のランニングと長男とのアルビレックス新潟のサッカー観戦。

愛される店舗を目指して

まず、御社の事業概要を教えてください。

現在、県内を中心に4つの事業部を展開しています。まず、「ホームセンター事業部」。大工・園芸用品、家庭用品と食品、100円ショップのダイソーはFCです。あと「TSUTAYA事業部」として、レンタル・書籍、いわゆる「HIRASEI遊TSUTAYA」という形で取り組んでいる事業部があります。そして「エクステリア事業」。これはカーポート等のお家のメンテナンス・リフォームの事業部です。近年はそこに、「ひらせいファーム」という事業を立ち上げました。これは新潟市が、政府の特例特区に認められたのを機に設立した、特例の農業法人です。主に西蒲区松野尾(まつのお)地域の生産者さんを中心に、野菜苗、青果を生産し、ひらせいホームセンターで販売を行っています。

ひらせいホームセンターは創業から今年で51周年になります。創業者である私の父が言っているのは「5歳から80歳までのお客様が、いつでも誰でも気軽にお買い物を楽しんでいただける場所を作っていこう」と。これが我々の一つの経営戦略でもあり、差別化の戦略として取り組んでいることですね。
差別化を図る具体的な戦略としては、他のホームセンターよりも食品を強化して、TSUTAYAのレンタルや、ダイソーを入れることで様々なものを提供するということ。我々の中ではこれをずっと続けています。
更に5年ほど前から、時代や地域に合わせた売り場作りの工夫に取り組んでいます。お家の中や外をメンテナンスする家庭用品や、地元の生産者さんと一緒に行っている家庭菜園用の野菜苗、花苗等、時代や地域のニーズを踏まえて、お客様に楽しんでお買い物をしていただける売り場作りに力を入れています。

「個店化」と「標準化」の二刀流

今年8月1日、附船町に新店舗をオープンされました。高齢化が進んでいる地域なので高齢者の方が歩きやすいように、通路を広くするといった店舗づくりの工夫をされたと伺いました。

そうですね。附船町の店舗は元々コミュニティセンターがあった場所でした。なので、新潟市の方からも「地域の皆さんに喜んでもらえるお店を作って欲しい」というお声を頂きました。我々も地域の皆さんとコミュニケーションを取る中で、「ゆっくりと安全にお買い物を出来る場所にして欲しい」と声を頂いたので、そのような店舗づくりにしました。品揃えに関しては、周辺にはホームセンターが無く、ドラッグストアが点在する地域という特徴がありましたので、そういった地域の特性を踏まえながら、どういった商品を取り扱って欲しいか、直接お客様から寄せられた声も反映した品揃えにしています。

我々の運営方針として、「個店化」と「標準化」の二刀流でやろうと決めました。地域に合わせてどういった品揃えをした方がいいのか、それぞれの地域に合わせた店舗づくり、「個店化」をしていくこと。ただ、我々は安さというのをお客様に求められているので、そのためにはやっぱり仕組みがないといけない。その仕組みとして、ローコストのオペレーションは我々チェーンストアが絶対的にやらないといけないことであり、そのためには「標準化」が必要になります。このふたつをきちんと実現できるような仕組みを作っていこう、というのが今期のテーマであり、実現するモデル店としてやっていこうというのが、附船町店の位置づけになっています。

附船町店は今後の方向性を決めるすごく重要位置づけなんですね。避難所としても使用できる店舗ということですが、それは新たな店舗の展開につながりますね。

避難所は地域のみなさんからもご要望をいただいて、店舗に安心安全な避難所を作りました。ホームセンターは災害など大きい出来事があった際は、特にお客様が多く来店される場所です。コロナも災害のようなものでしたよね。コロナの時ですと、マスクを求めて来店されていました。ホームセンターは生活基盤産業として位置づけられているので、我々もお客様にそう思って頂ける、そして、地域に貢献できるお店作りと品揃えをやっていこうと常に考えています。

徹底した「5S」がもたらす事

昨年12月、社長に就任されました。会社の方針変更や、新しく始めたことはございましたか。

8年前までは都内の金融機関におりました。そこから7年間、本当に色んな勉強させてもらって、3年前に副社長になったんですよ。商品と店舗運営を中心に営業本部長をずっとやってました。去年12月に社長になって、じゃあ今この瞬間、何かが大きく変わっているかというと、あんまり変化はなかったですね。 自分の中で肩書きが変わったから何か大きく変わったかというより、今やるべきことをひとつずつ積み上げている状態でしょうか。会長と一緒に話をしながら、会社の方向とかを決めていけるのはありがたいですね。

これからのことを更にお聞かせください。健康も経営の方にも取り入れているということで「健康経営宣言」をされてます。社員の安全や、楽しくそこで働いてもらうこと。それはひらせいさんの根底にあるようなものなんでしょうか。

そうですね。まずひとつ大事なのは、働いている人の収入面を豊かにしようということ。そしてもうひとつが、せっかく働いていただいているので、その働いてる時間は充実した気持ちでいてもらいたいということです。このふたつを達成するために、最も大切にしていることが「安心安全な労働環境」。これがもう絶対のベースになっています。その環境を整えるっていうのが最優先で、経営資源をここに使っていこうと考えています。それで、今年も政府系金融機関である日本政策投資銀行さんに健康格付っていうのをお願いしています。これは現在まで8年連続で取得しています。そこで様々な働き方への配慮、世の中のトレンドに関する勉強をしながら、制度変更等、職場環境の改善に取り組んでいます。

あとは社員の皆さんにお願いしている事として、皆さんが働いている中で、不便な事や無理だとか無駄だとか思っていることを「お店の声」として挙げてもらうことです。それを我々は、改善できるものを判断して改善していく。「作業時間が大幅に減った」、「経費が減った」というものもあります。「売り上げが上がる」っていうパターンもあります。いずれにせよ、今うちの店舗スタッフ含めて全員には、「定量で測れるような作業改善をまず進めていこう」って言ってるんです。無理だとか無駄やムラに感じているところを無くして、これで生産性を上げていこう、という取り組みを3年前からずっとやっています。それにプラスで、毎週水曜日に取締役、執行役員が各店舗に行って、各店の外周や倉庫、入口の掃除、「5S」をやりながらお店の声を聞くっていうのを繰り返しやっています。

また、60歳、65歳で定年という雇用期間っていうのはあまり概念としてありません。そこからまだ働きたいですという人については、うちは「相棒スタッフ」という名称で、70歳以上でも希望の時間で働けるという制度を設けています。本人の希望する日時に応じて働いてもらう、安心して働き続けられる環境を作っています。

あとは一般的に福利厚生であるような「子供手当」や「育休」。最近、うちでも遂に店長の男性社員が育休をとるようになりました。あれはいいですね。育休を取得した店長のお店を見に行ったら、その店長は今回第一子が生まれるということで、周りのスタッフが「店長がいない間は頑張るんだ!」っていう、店長がいる時よりもよっぽどいい店になっていました(笑)。うちは店長会があるので、その時みんなに共有してもらおうと思ってるんです。そういう雰囲気を持ったお店作りが出来ていくっていうのを、実際目にすることが出来て嬉しかったですね。

先ほど出た、「5S」というは何の略でしょうか。

5Sは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」です。本部も月に1回、第1火曜日の10時から11時にみんなで掃除をしています。要するに業務時間外になると残業が出てしまうので、お客様にはご迷惑をかけてしまうんですけど、業務時間中の10時からみんなで掃除をしています。

それ以外には毎週1回、昼礼の時に自分の周りの片付けをやります。5Sをうちの成長戦略のひとつとして取り組んでいて、まずは役員が率先してその店に行って5Sに取り組みます。やっぱり役員も一緒にそこでやることによって、先程申し上げたように「生産性を上げるためにどうしたらいいか」とか「こういうところに無駄があるんじゃないか」っていうのを勉強もできるので、それでこの5S活動というのをまず役員からやっています。
プラスお店でも、毎週月曜日はお客様のカートを全部拭く、店舗や駐車場周りの除草をやるのが決まっています。こういった事を我々5Sとして、定期的に日にちと実施期間を決めてやるという取り組みをずっとやっています。

お客様からの声が「お客様カード」という形でびっしり壁に貼られていましたが、どんな形で活用されているのでしょうか。

「お客様の声」は本当に凄くありがたいです。毎日、まず会長と私が見ます。それから役員会で共有をして、例えば「レジの接客が良くない」といった言葉がカードに書いてあった場合、エリアの店舗運営部マネージャーが店舗に行って、「こういった声があったのでもう一回、じゃあ改めて挨拶しよう」と、朝礼で改善出来るように実施する事が必ず決め事になってます。 褒めていただく言葉もあります。褒めていただいている言葉についても、お客様からの苦言と同じく全員と共有します。

実は先週、先程お話しした附船町の店舗にも、「お店に行くまでの所に横断歩道がないので不便に感じる」と声がありました。それで店長と話しあって、お客様に安心してご来店していただけるよう、駐車場のところに横断歩道の線引きをしました。全てのお客様に満足していただくのは難しいかもしれませんが、安心安全な店舗を作ることが我々の中で最優先です。それをやるための必要な投資をしていこう、準備をしていこうっていうのを決めています。お客様カードは、一番に我々にきっかけをくれるカードですね。

また、研修には各等級があって、年2回、あと店長会を別にして年に1回、必ず本部にみんなに来てもらうんですけど、休憩時間の中で10分は必ず全員が、お客様カードを見る時間っていうのを設けています。

成長する喜びを全ての人へ

採用活動も引き続きされています。県内大学と実施しているインターンシップについてお話しいただけますか。

24年入社としては、8名の新しい人に入っていただきます。
インターンシップについては高校生の方や、一日、二日受け入れの形もあります。我々が一番ずっと長くやっているのは、新潟大学の伊藤ゼミとのインターンシップです。これは私が入社する前からの取り組みで、10年以上やっていると思います。 テーマは4、5人の新潟大学の皆さんが決めています。彼らとして良いところは、それを売り場で実践できる事ですが、その方向性が違うとよくないので、方向の調整は私が一緒に話しながらやります。

彼らの目線で、ひらせいホームセンターで買った物で、食事を作って、部屋のコーディネートをして、それによってゆったりした時間を過ごすことができるというプロモーションを作ってもらい、それを実際に店頭で提供しました。彼らは買う側で、ものを使う側。20代の人がこういうことを考えてるのか、こういう所がひらせいは便利で魅力だと思っているんだと、こちらが気づけないところを再発見でき、商品の組み合わせもすごく新鮮で、いつも我々の方も勉強させてもらっています。

そして年に一回、お取引先様400人ぐらいが集まる戦略方針発表会があるんですが、そこが彼らの最終プレゼンの場になっています。その前に社内の店長会議で話してもらうんですが、インターンシップの1年間、お店の売り場で実証してみて、その実証に対して検証して更に改善していく。その成果を店長会議とその発表会の時にプレゼンをしてもらうんです。
お店に入ってレジ打つようなインターンシップをするというよりは、月に1回ぐらい彼らの企画をプレゼンしてもらって、ある程度企画がまとまったら、今度は店舗にそれを落とし込み実践してもらう。検証してもう1回直すっていう、このスタイルのインターンシップを10年ぐらい続けていますね。

学生のテーマを受け入れるっていう体制が「懐が深い」と感じました。学生さんにとってもお店にとってもいい機会なのでしょうね。

大人の事情、業界の常識がない彼らの発想は勉強になりますね。
うちのメーカーさんは私の話よりも大学生の話を真剣に聞いていますよ。メーカーさんにとっても大学生が発表して、その声を聞く機会は貴重なので、その発表を本当に楽しみにされているメーカーさんも沢山います。今時の学生は本当に凄いなと思いますね。ああいった場で喋りたいと感じている子たちもいますし、すごくいい機会なのかなと思います。

今は、新潟県農業大学校の校長先生とお話をしていて、新大生とは違うやり方で、どういう風に一緒に取り組みができるかっていうのを楽しみにしています。我々は農業にも力を入れてやっているので、うちの農業法人へのインターンシップだったり、もしくは彼らが作ったものをひらせいで店頭販売をしてみたりとか。来年に向けて準備をしている状態ですね。

そこで学んだことを今度は実際に社会人として、現場で発揮する機会が来るかと思います。学生や若い人に対してメッセージ、アドバイスをお願いします。

やっぱり挨拶をする。それからメモを取る。うちの新入社員にもまず「一番若い皆さんが持っている最大の武器は、笑顔で挨拶することです。これとメモを取れば絶対に悪いことはやってきません。だから是非実践して、運のいい人になってください」って必ず言います。挨拶がちゃんとできる人とできない人とでは違います。こういう場での挨拶もそうですし、普段の挨拶「おはようございます」、「お疲れさまでした」から、何かをしてもらったときの「ありがとうございました」とか全部そうです。そういう挨拶と返事ができる人には自然と良い縁が寄ってくると思います。自分も一緒に仕事したくなりますし、一緒に関わりたくなりますよね。

最後に会社や個人として、将来やってみたいことや、夢などがありましたら。

私のおじいちゃんやおばあちゃんは農業をやっていて。家の仕事を手伝うのが当たり前だったので、私はちっちゃい頃から、ずっと農業手伝いをしていました。当時は嫌で嫌でしょうがなかったんですが、それが私のバックグラウンドになっています。

「農業は世の中の基本だ」、うちのおばあちゃんがずっと言っていた言葉で、今でも私の心に残っています。うちのおじいちゃん、おばあちゃん世代にとっては農業っていうのは、ライフワークであり、とても大切なものなんですよね。もちろん新潟では農業は一大産業でもあります。ただ、農家さんがだんだんこれから少なくなってきて。我々は今、ホームセンターも農業法人もやってるので、どうやって活性化して盛り上げていくかっていうのが課題です。 まずは農家さんの収入を上げること。生産を上げられる「農業の産業化」っていうのを、この10年ぐらいでやっていきたいなと思っています。

もうひとつは、ひらせいホームセンターでも注力している家庭菜園やガーデニングの楽しさを伝える活動ですね。新潟は農業関係者の方も多いので、機会はあると思うんですけど、私が東京にいて娘がまだ幼稚園生の頃、自分で何かを育てるっていうと、幼稚園で体験は出来るけど本格的なことはできなかったんです。家庭菜園はベランダで鉢に植えるだけでも、きちんとしたものが育っておいしく育てられるので、育てる喜びや収穫する喜びだとかっていうのは、絶対味わえるんですよ。そういうのを広めていきたいですね。
それがあって我々は、家庭菜園応援サイト「ikusei(イクセイ)」を作ったんです。そういったことの普及のためですね。育てる喜びを都内でも味わってもらえるように、通販やインスタで情報を提供しています。

最近はちょっと落ち着きましたけど、私が新潟に引っ越してきたばかりの頃は、よくパパ友やママ友から連絡が来ていたんですよ。「苗を買って育てたんだけどうまくいかない」とか。連絡が多くなってきたので、それでウェブサイトを立ち上げたんです。「ここに全部載っているから、ここを見てくれ(笑)」と。それがきっかけで、「ikusei」になったんです。だからあのサイトは私のパパ友とかママ友、あと会社の先輩とか後輩の声で出来たんですよ。
実は意外とやりたいと思っている人は、たくさんいるんだなっていうのが分かりました。ちゃんとできたら、「子供がすごい喜んだ」といった声もたくさんいただきました。

我々は本当に「土」に育ててもらっていると思っています。「土」は力強くて生命の力があるので、その「土」の力っていうのを感じてもらえるような、また家庭菜園を楽しんでもらうための情報発信とか、場所だとか商品っていうのを更に提供していきたいです。これは会社としてもすごく力をいれています。

確かに、育てる楽しみや収穫する楽しみ、家族みんなで分かち合う楽しみや繋がり、そういうものが少なくなってきている今、新たに作るというよりも「残していきたい」と思いますね。

うちの契約農家さん達は、本当に花苗も野菜苗もいいものを作ってくれるんです。春になると店頭で、家族が買い物に来て「この花がいい」とか「あの花がいい」とか、そういうのを見るとすごく嬉しいですよね。だから、我々としてはそういう場を提供し続けなきゃいけないし、その楽しさっていうのを味わってもらいたいです。

インタビュー:2023年10月

Information

株式会社ひらせいホームセンター ホームセンターを核とした、「生活」、「農業」、「住まい」、「カルチャー」の4業態を軸に、新潟県内外でグループ合計144店舗を展開。創業50年を経た今も、地域の声、顧客の声に寄り添う店舗づくりに取り組む。農業の活性化のため家庭菜園応援サイト「ikusei(イクセイ)」も運営。

〒950-0218 新潟県新潟市江南区いぶき野2丁目1-1
TEL:025-385-3994
URL:https://www.hirasei.net/


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