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column 4

株式会社キタック2020.10.01

暮らしに欠かせないインフラを整備。人づくりで更なる技術革新を目指す。

災害対応への強さから「防災のキタック」と呼ばれる、総合建設コンサルタント・株式会社キタック。同社の強みは、高い技術力を持った人材と、そのチームワークを活かした総合力。幅広い年代、異なる分野の社員がいるなか、どのように意思の統一、意識向上を実現しているのだろうか。

中山 正子(なかやま まさこ)1969 年生まれ。新潟市出身。玉川大学文学部芸術学科卒業後、グラフィックデザイン等の仕事を経て、2006 年株式会社キタック入社。CG ソリューションセンター長、総務部長、専務取締役等を経て、2017 年代表取締役社長就任。座右の銘は「百聞は一見に如かず」。

優れた技術で安全なまちづくりに寄与

御社の事業内容を教えてください。

建設コンサルタント業は、地質調査、土木設計、それから環境調査などを行なっています。聞き慣れない業種でも、皆さんの毎日の暮らしには必ず関わる仕事です。創業から地質調査を行なってきましたので、新潟県内であればほとんどの地域の地質・地盤データを持っています。また、土木設計業務では道路や橋、河川堤防等の設計をしています。最近では高度成長期に作られたコンクリート構造物の老朽化に伴う点検や補修設計を行っています。環境分析試験や再生可能エネルギーにも取り組んでいます。建設や土木に関わるコンサルタントで、施工は一切行いません。

新潟市初のラウンドアバウト。信号のない一方通行の交差点で、日本ではまだ採用実績が少ない。

異業種から転身、2 代目社長へ

キタックの創業は1973 年。子供時代の思い出はありますか?

当時は、幼すぎてよく分かっていませんでした。父は早朝から深夜まで仕事で不在でしたから、会社が潰れないように毎日建物の屋根を支えに行っていると思っていたようです。また父が家にいる時は自宅に社員を招いて賑やかだったことを思い出します。「お父さんの仕事は何か」という宿題が出た時に、建設コンサルタントという仕事は分かりにくく「橋や道路をつくるために地面や土を調べたり、設計をしたりする」と父に言われるがまま答えを書いた記憶があります。

創業時は新潟市中央区関屋田町の空き家を事務所とした(奥の2階建てを含む)。
キタックに入社した経緯は?

大学を出て東京で就職した後、新潟の広告代理店を経て、デザイン会社でマネージャーをしました。そして2006 年、36 歳の時にデザイン会社の経営権をキタックに譲渡して、新設部署であるCG ソリューションセンターのセンター長として、グラフィックデザインの仕事をしました。2009年に取締役になった時から総務の仕事にも携わるようになり、2011年に総務部長になりました。自分が社長になるとはゆめゆめ思っていませんでした。

新潟県内上場企業では初の女性社長ということで、苦労したことはありますか?

社長には男女の別はないと思っています。女性だから苦労したということは特にありません。むしろ “女性枠”として、いろいろな場面で取り上げていただき分不相応な恩恵を得ている部分はあると思います。社長に就任した当時、「女性社長としての意気込みはなんですか?」などと、「女性だから」というところに焦点を合わせた質問を多く受けました。いつも思っているのですが、社長に男女の区別が必要でしょうか。業績と利益を上げて、株主に還元、社員のお給料を上げ、社会に貢献することが企業の使命ですから、男女の別は問わず社長の仕事は同様だと考えます。

経営者目線を持つ社員を育てる

社長に就任されてから時間が経ち、ご自身のなかで変化したことはありますか?

コンサルタントという業種は、「人」あっての仕事です。常に次のリーダー、そして経営者を育て続ける必要があると考えていました。それは今も変わりません。会社の業務を円滑に行うためにも、誰もが同一言語で話せる必要があると感じました。会社では業務を遂行するにも経営するにも、意思統一を図るには会社独自の言語ルールが必要だと思い、社員研修に力を入れています。

単なる学ぶ場としての研修ではなく、毎年、さまざまなカリキュラムやプロジェクトチームを組んで、社員が自ら考え経営に参画すること目指して取り組んでいます。今、力を入れているのは“あすかプロジェクト”です。「あすのキタックをえる、りたい姿える」という思いを込めて、課長クラスの社員を中心に行っています。また若手社員による“未来プロジェクト”など、いくつものプロジェクトが進行しています。

「あすかプロジェクト」について、詳しく教えてください。

あすかプロジェクトでは、まず中期経営目標「KITAC2050」を作成中です。キタックの2050年はどんな会社でありたいか。今年20歳の社員が50歳になった時により良い会社にするために、今すべきことを探っています。私が社長になった時に作成した3カ年の中期経営目標が今期で終了するため、30年後を目指した上でこれからの3年間を描きます。誰でも日頃の業務に追われ、自分の立ち位置で物を見ているものです。あすかプロジェクトは経営のトレーニングも兼ねていますので、「社長の視座で考えること」を目標とし、自分が社長だったら何をするかという観点で語ってもらうところからスタートしました。

いくつものステップを経て現在は、山積する課題に対してひとつずつ真剣に解決策を見出すための積極的な議論を行っています。業務効率化への足掛かりになるのは何か。業者と人手が足りずに悩むことも多いボーリング作業など、これまでの業務をどのように継続させていくか。さらにBIM/CIMのような3Dの積極的な活用や、数値解析シミュレーションを代表とするソフトウェア開発等々。新技術への取り組みの強化をどう図るのかなど、話題は尽きることがありません。

企業にはSDGs も求められていますが、何か取り組んでいることはありますか?

私たちの仕事はそもそも公共インフラのコンサルタントですから、業務そのものがSDGsと強く結びついています。目標6(水と衛生の環境保全)、7(エネルギー供給)、9(強靭なインフラの整備)、13(気象変動と自然災害への対応)の4つは基幹業務と直結しています。

良質で経済的な社会資本整備には、地質調査技術の高度化と土木設計技術が求められます。老朽化した社会資本の維持整備のための劣化診断技術や効率的な延命技術。災害から守られた安全な暮らしには、防災・減災に関わる調査・解析対策技術の進歩。そして環境に配慮した循環型社会の形成のためには自然エネルギーをいかに活用するか、そして環境汚染への対策技術など。これまでも努めていますが、さらに技術を高めていきたいと考えています。

新潟市北区の大規模太陽光発電所「新潟海辺の森ソーラーパーク」。年間およそ4,400世帯分の電力を発電している。

社会とニーズの変化に常に敏感であれ

2023 年の50 周年、またその先の100 周年を見据えた抱負をお願いします。

さきほどのSDGsの話だけではなく、持続可能な企業として成長を続けていきたいと考えます。次世代が働きやすい環境で働けるように、時代に合わせて柔軟に変化できる企業をつくっていくこと。そうすれば企業は長続きするものだと思っています。

当社では知足美術館を本社に併設したり、社会福祉法人をつくりケアハウスの運営も行っています。私たちの行っていることは些細なことかもしれません。それでも地域社会に貢献していくことは企業の使命だと考えています。時代に合わせて地域と共に歩んでいける会社でありたいと強く願っています。

会社の伝統行事として、35回続く「キタック新光町夏まつり」。新潟の経済界や協力会社等、約1,000社を招く。毎年晴天に恵まれ続けた行事も、2020年は新型ウイルスの影響でやむなく中止とした。
最後に、20 代の就活生や新社会人、30 代の中堅社員など、若い世代へのメッセージをお願いします。

今は100 年に一度という時代の激変期。世界中が大きく変わっていく渦中で次世代を創るのは20 代、30 代の人たちだと感じます。ITなどの技術革新も目まぐるしく進み、あらゆるチャンスが掴めるところにあるようにさえ思います。必ずしも起業家になれば良いわけではなく、与えられた環境の中でさえも、どんどん新しいことにチャレンジして、自分を磨き続けてください。何かひとつでも、きらりと光るものがある。そういう人を目指していってはどうでしょうか。

若手の起業家を育てたいという割に、日本には“エンジェル”が少ないように思います。20代、30代を応援する大人たちが掛け声ばかりではなく、素敵なビジネス・エンジェルになりたいものですね。

インタビュー:2020 年8 月

Information

株式会社キタック新潟県を拠点とする総合建設コンサルタント。高度な専門技術を擁する地質調査、土木設計、環境分野、ITの技術連携による総合的な対応力が強み。さらにWebマーケティング等の業務展開も行っている。地域貢献として、「知足美術館」「ケアハウス知足荘」などを運営。また国際技術交流においては、1979年から中国、その後は韓国等の北東アジアを中心に推進してきた。2007年から会長が名誉領事を務めるモンゴル国名誉領事館も社内に設置している。

〒950-0965 新潟市中央区新光町10-2
TEL:025-281-1111
FAX:025-281-0001
URL:https://kitac.co.jp

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