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column 21

株式会社ワンワード2022.10.15

趣味だって熱中して深めれば、
自ずと道になる。

楽曲制作やDJなどクリエイティブな仕事をしている貝さん。クールかと思いきや「笑顔を作れたら自分も楽しくなる」と言うお人柄。趣味だった音楽を深めるに連れて「こんな時代背景だから、こんな表現の音楽が生まれ、その音楽がまた時代にどんな影響を与えたか」という繰り返しを自然と体に取り込んでいました。それは時代を捉えるセンスとなって仕事においても生かされています。

貝 雅史(かい まさし)新潟市出身。小さい頃からの音楽好きが高じて1996年に音楽業界でキャリアをスタート。楽曲制作やイベント、Web制作を手掛けながら2013年にエンジニア専門のシェアオフィス運営をはじめる。2022年アフターケアの重要性を感じ、デジタルコンテンツの総合会社「ワンワード」を設立。人と関わる事がとにかく好きで、成果物やクライアントに誠実であることがモットー。

趣味でやっていた副業が本業に

多方面に事業展開されていますが、業務内容を詳しく教えてください。

大きく分けると4つに分かれるんですが、1つ目はマーケティング。SNSの運用だったり、広告運用もそうですが、現状のECサイトを見させていただいて「こういう風にやったらいいんじゃないでしょうか」と提案します。2つ目はそれに伴うWeb制作。3つ目はイベント企画で、プロデュースする事もディレクションで入る事もあります。あとはオンライン配信ですね。

4つ目がクリエイティブの方で、動画制作。テレビCMもあれば、YouTube動画もあります。他社さんとちょっと違う点は、そのクリエイティブの中に「楽曲制作」が入ってくる事。CMのオリジナル楽曲も作りますし、それに付随してホームページを作って、後の広告展開で運用もします。ここまでワンストップでできるのがストロングポイントですかね。うちは自社レーベルもあるので、そこも他社さんにはないところかな、と思っています。

新潟で楽曲に特化している会社は少ないと思いますね。片手で収まるんじゃないですか。レコーディングスタジオはありますが、ギターやベースの生バンドじゃなくて、デジタルな機械を使って一人でやって。さらに自分の場合はミックスダウン、マスタリング…、要は最後の音のバランスまで調整しています。

社名の「ワンワード」の由来と設立はいつですか?

クライアントさんから依頼や相談を受けると、最初の段階で一つのワードから全てが始まっていくと思うんです。取り掛かりの0→1(ゼロイチ)の会話を大事にしたい思いがあったので。ただそこだけじゃなくて、0→1から最終的に100にしていく事も目指したい。「初心忘るべからず」の意味も込めてワンワードという名前にしました。

設立は、屋号的には2013年ですが、もともと身内で「雪国あられ」という米菓会社をやっていまして。そこで仕事をしつつ、副業みたいな形で音楽の仕事をしていました。そもそもお金を初めていただいてから25年ぐらい経つんですよ。DJだったり、お店のBGMのプロデュースをさせてもらって月毎に変えていくのがあったり。楽曲制作やイベント、Webも並行してやっていたんですよね。独立してからも米菓会社は特販部門で関わらせてもらって。本業が米菓で、副業が音楽関係だったのが、今は本業と副業が入れ変わった感じで、やっている事は全く変わってないですね。

お仕事の中にある「アルビレックス新潟のフロアディレクター」とは?

スタジアムでは、MCさん(しゃべる人)とか、音響さん、映像を出す映像さんは4階にいるんですよ。そこからは下のピッチレベルの現場が遠いので、リアルタイムでどうなっているかを上に伝達してスムーズに進行していくのがフロアディレクターですかね。選手入場も自分が「はいどうぞ」と言って出しますし、選手がゴールを決めたら「何番のゴール」とかを伝えています。

スポーツイベントで流すオリジナル楽曲を作って、当日の現場監督をされるのかと思っていました。

音楽で僕の事を知っている人だとそういうイメージがあるんでしょう。アスレチックスチャレンジカップという陸上競技の大会では、僕はDJとして競技ごとに音のジャンルを変えて、ゴールした段階でボタンを叩いて専門の音を流します。1500メートルとか長距離だと、ずっと音楽を止められないのでミックスするとか。そういう場合はスタジアムの4階で音をやっていますね。その時その時で求められているものにお応えする感じですかね。

音楽から時代の変遷を学んだ

子どもの頃からこういう仕事を目指していましたか?

特に音楽に関しては仕事にしようなんてさらさらなかったですね。小学校の卒業文集でタイトルを「夢」と書いていて、4つあるんですよ。普通1つじゃないですか、将来の夢って。小学校で野球部に入っていたから野球選手。次にサッカー選手…、そこからサッカークラブに入って最終的に社会人リーグまでずっと続ける事になるんですけど。3個目が父親から「競輪選手は1位になると1千万円もらえる。ビリでもお金がもらえる」と聞いて、大人になって何の仕事でお金を稼ぐかって考えた時に「1千万だったら魅力的だな」って競輪選手。

4個目は小学生なのに税理士。数学が一番得意だったから、それをやって最終的にどういう職業があるんだろうと。税理士の仕事内容は全然わかってなかったんですけど。めちゃめちゃいっぱい書いているなって(笑)。だからまさか楽曲でお金をいただけるようになるなんて思っていなかったですね。

現実をちゃんと見ていたんですかね(笑)。その中で音楽にシフトしていきますがきっかけは?

小さい頃から「音楽好き」ではあったんですけど…。もともとオタク気質や収集癖なところがあってJポップを聴いたり、Jポップのチャートを見たりしていたら、どんどん全米とか、イギリスとか、他の国のチャートが知りたくなって。小学生の時からラジオで情報を得ていたんですよね。

そのうち「80年代の音ってどんなだったんだろう。70年代の音は?」って遡るようになって。高校生ぐらいになると、なるべくCDで売ってない楽曲を聞きたくなって。その手段はリアルタイムでは過ぎていたレコードで、その中でソウル、ジャズ、フュージョンとか昔のジャンルの音を聴きたくなって。ターンテーブルとかミキサーとかレコードを聞くための機材を揃えたのがそもそものきっかけなんですよね。だからまさかその後にね、仕事でDJをするとは思ってもみませんでした。

その頃に聞いた音楽は今の仕事に影響していますか?

めちゃくちゃありますね。クライアントさんの年代によって聞いてきた音楽って違うので。そこで会話を合わせる事もできれば、その時の経済がどういう流れで、こういう音楽ができたから次にこの音楽が来たんだとか。70年代のオムニバスのCDがあってもタイムラインがどうかわかんないですよね。そこを教えてもらったり。より会話ができる部分もありますけど、より深まるというか、自分のためにもなりますし。それで仕事もさせてもらって、こんなにありがたい事はないですよね。

リアルタイムに生きている以上、ちゃんと耳さえ傾けていれば今の旬の音楽って捉えられると思うんです。けれど古いものに関してはやっぱり先駆者に聞いたり、昔の曲を掘っていかないと分からないので。逆に分かれば温故知新じゃないですけど「こういう時代があったから今のこういう歴史になって。あ〜、だから今こういう音楽なんだ!」って下からも遡れるし、上から下げても音楽の知識って増える。

多分、仕事もそうでマーケティングも、Webをただ作ればいいだけじゃなくて。「どこに向かってどういう風にしていくためのホームページなのか」は根本的な部分で一緒じゃないですか。そういうところは好きな音楽に夢中になった事で、自ずと学んできたのかもしれないですね。

時代には勝てないから順応する力を

貝さんは生まれも育ちも新潟ですか?

はい、今まで一度も出た事はないですね。ずーっと新潟です。若い頃は「新潟で成功できないやつが東京に行っても成功できない」って思っていて。今ならネットがどんどん普及して…、昔なら楽曲を作ったらCDに焼いて送っていたんですよ。それがメールで曲が送れて、修正ポイントが返って来て、テレビ電話やZOOMでもやり取りができるようになって。だから年齢を重ねるほど「新潟にいてもできるな」って。

新潟って自分が生まれ育っているから、良さとか悪さとか含めて当たり前のようにきたんですよ。ただいろんなところを回れば回るほど「新潟ってこんなにご飯がうまいんだ」とか「新潟ってこんなに海もあって、山もあって」とか良さが分かるようになって。より好きになるっていうか、当たり前だと思っていた事が当たり前じゃなかったんだなって。

新潟でも全然仕事はできますし、新潟で生まれ育った以上は貢献したい思いが強くなってきましたよね。自分的に一番好きな場所なんで、だから新潟を出るって今だとなおさらないですね。でも県外に全く行かない訳にはいかないんですよ。水面下の情報だったり、人に会って生まれるものだったりって絶対あるので。くだらない話だったとしても、そこからまた違う発展になる可能性ってたくさんあるので。

コロナ禍を経験して思う事はありますか?

「やっぱり時代には勝てないな」っていうのが常に自分にあって。新しいものとか、情報とかって常に取り入れないと状況判断ができないじゃないですか。止まってしまうと置いていかれるので、時代の動向だったり旬なものだったりは把握しないと。そこで情報が多ければ多いほど、自分の中で選択肢も広がるので。

コロナになってうちも野外イベント関係が前年の80%減になったんですよ。自分も焦った時期はあったんですが、面白いもので、手売りができないのでECサイトを作りたいとか、イベントができないからオンラインでとか、そういう需要が何カ月遅れで増えてきて、結果的に前年よりも上がったんですよね。

ただ提案するだけじゃなくて、時代に合わせて運用までちゃんとするのが自社のストロングポイントなので。時代のニーズを汲み取れて、その時に自分たちに武器があって、ツールがあって、お客さんが喜んでくれる仕事ができればいいと思っていて。もちろん自分も1年後の目標、3年後、5年後って作るんですよ。でもコロナみたいな全く予期せぬ事になった時、目標に対して本当は直進ならベストですけど、どうしても横にずれちゃうじゃないですか。

でも自分は落ちなければいいので。横に行ったり回り道しても、上がっていればそれでいい。着地点もここじゃなくて、こっちでもいいですよね。そういう順応をしていかないと。いかに時代のニーズに付いていけるかだから、ずっと発展途上っていうか、栄える前の段階でいい。想定通りには行かないので、そこに順応できて、ちゃんと提案して運用して、ずっとお客様の要望に応えられるようにしていきたいですね。

そのためには言われた時にやれるように幅を広くしておく事。1個に集中じゃないですよね、うちの会社って。もともとトータルを目指していたし。

その時の100%を出し惜しみしない

どんな風にお仕事が入ってくるのですか?

子どもの頃にサッカーのチームメイトだった人、音楽つながりで出会った人…、みんなその時は遊び仲間ですよ。そういう人がどんどん大人になって「こういうのができるなら仕事しようか、一緒にやろうか」とか「友達の会社で悩みがあるやつがいるんだけど聞くだけ聞いてくれない」って紹介してくれたり。うちは営業がいないんですが、その積み重ねで仕事をいただいてきたと思っているんですね。

特に、名字が「貝」じゃないですか、貝殻の貝。良い事しても目立つんですが、悪い事するともっと目立つ(笑)。仕事も一緒で、お客さんに喜んでもらったり、笑顔で褒めてもらったり、そういうものがその先につながる繰り返しだと思うので。ちょっと悪い仕事をしたり、手を抜いちゃうと悪い噂ってもっと早いじゃないですか。なのでいただいた案件は自分たちの全力を尽くすしかないですよね。その時の100%を出し惜しみしなくて。その積み重ねでしかないですよね。

1日の仕事の流れを教えてください。

その日によって違うんですが、平日だと商談やホームページ制作、SNSの運用や週末のイベントの打ち合わせを夕方ぐらいまでやって夜は楽曲を作る。夜の方がはかどるんですよ。電話も来ませんし、静かな時間が増えるから。その方が発想が生まれて集中しやすいですよね。

週末はイベント会場や現場に出て、ディレクターなり、音響なりをやる。自分は止まっているのが嫌いなのもあって、休める時に休む感じでしょうか。不安になる事はあるんですよ、実際。けれど、やっぱり仕事が好きだし、人と関わるのが好きなので。だから好きな事ずっとやっていて。休みは多くないんですが、あんましストレスになっていないですね。

今の趣味は何でしょう?

もともと趣味が音楽だったじゃないですか。それが仕事になって趣味は諦めちゃった訳で、なくなっちゃったんですよね。今は釣りをしていますが、釣った魚はおいしく食べたいって自分でさばくようになったんです。釣った直後に神経を締めたり、血を抜いたり。いい鮮度だともっとおいしい。何でもそうやってこだわっちゃう癖があるんですけど。

あと、ずっとサッカーをやっていたんですが大きめのケガを何度もしちゃって。今はプレーしてないですけど観戦するのはすごく好きです。ちょっと前に国立競技場でパリ・サンジェルマンFCって有名なクラブと川崎フロンターレが試合をやった時は視察が名目でしたけど…、100%視察じゃないっすよね(笑)。「おっ、メッシがいた!ネイマールがいた!」と楽しんで。現場の人がどういう動きをして、どういう演出で、どうハケたかは一応見ましたけど。公私混同しているところがあるかもしれないですね(笑)。

傲慢になったら先の成長はない

貝さんは仕事も人生も、楽しむのが非常に上手な印象を受けました。
ご自身の中に楽しむためのキーワードはありますか?

もちろん仕事は楽しくない時も、大変な時もあるじゃないですか。でもその仕事をこなした時に、誰しもそうだと思うんですけど、お客さんから喜んでもらったり、お礼言われたりするとやっぱりうれしいじゃないですか。そのために全力を尽くすし、言われた時にすごく報われるんですよね。「自分ではできないかもしれない」って状況はいっぱいあったんですが、「この知識を自分が身に付ければ要望に応えられる」って思うと、最終的にお客さんの笑顔があればあんまりそこは苦じゃないですよね。

本当に喜んでもらえる事があれば人生を楽しんでいると思うし、好きな事でも趣味でも、そうだと思うんです。釣ってきた魚を友達にあげて喜んでくれたら「もっと釣らないと、もっと技術を向上しないと」ってなりますし。そういった意味では遊ぶでも、仕事でも、一緒だと思うんです。「笑顔」でしょうかね、キーワードは。逆にそれ以外ないかもしれないですね。

若い世代の人たちへメッセージをお願いします。

子どもの頃はもうたくさん遊んでいたんですよ。ほんと好きな事で。観光で県外に行ってみようとか、映画が面白そうだから観ようとか。趣味も含めて人と関わる事がどんどん増えていったんですよね。その時はお互い社会人ではないので仕事の話はまずしないじゃないですか。でもその友だちと未だに付き合いがあって、仕事の相談をさせてもらって、そこから派生して、枝葉が分かれて、いろいろ紹介していただいたんですよね。それが今の自分につながっている。

だから閉じこもるんじゃなくて、若いうちはいろんなところに行った方がいいと思うんですよ。釣りは仕事にならなそうですが、初めて会った商談先の人が釣り好きだったら釣りの話ができるじゃないですか。サッカーだったらサッカーの話が。

「何が好きなんだろう、何が夢なんだろう」って自分はよく分からなかったんですね。だけどあの時に逃げるように遊んでいた事が今につながっているので。興味がある事をどんどんやってみれば知識が付くじゃないですか。その知識って絶対にどこかで役に立って裏切らないので。仕事につながるか、つながらないか関係なくチャレンジすればいいと思います。

そうすると自ずといろんな人と知り合って…、いろんな考えの人がいるから、それを知るだけでも自分のキャパシティーが広がるので。本当はもうちょっとしっかりした事を言えばいいんでしょうけど、若いうちは遊んだ方がいいんじゃないですかね。それが後々の糧になるかな。自分がそうだったので。

今後のお仕事で目標がありましたら教えてください。

ネットがこれだけ普及して、デジタルコンテンツはもう欠かせないと思うんですよ。昔は良いものを作れば売れた時代があったんですが今はもうそうじゃないのに、作ったらゴールって思っている人がどうしてもいて。作ったところはあくまでもスタート地点で、そこからまず認知して、共感していただかないと。その上で消費者は行動に移すと思うんですよ。そこってすごく重要だから、クライアントさんと浅く広くじゃなくて、深く関わらせていただいて状況判断をして。状況が変わったらまた提案できる、運用できる自分になりたいですし。それでお客さんに喜んでもらえればもっと深くずっとお付き合いさせていただけると思うんですよね。

時代とニーズに傲慢にならずというか、これでいいなと思った段階で多分そこから先はないので、日々精進するしかないですよね。

インタビュー:2022年8月

Information

株式会社ワンワードマーケティング・Web制作・イベント企画・動画制作・楽曲制作などを手掛けるデジタルコンテンツの総合会社。企画から運用までワンストップでサービスを提供する。自社レーベル「ONEWORD RECORDS」を所有し、楽曲も制作出来る点は新潟でも稀少な存在。

〒950-0961 新潟県新潟市中央区東出来島10番1号
TEL: 025-284-0200
URL:https://oneword.jp

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